近年、世界のオンラインギャンブル市場が拡大傾向にあります。世界の市場予測サービス「Statista」によると、オンラインギャンブルの市場規模は、2030年までに191兆6200億円に達することが予想されています。
多くの人がギャンブルを楽しんでいる中、気になるのが男女差です。過去の調査では、女性よりも男性のほうがギャンブルで大金を使う可能性が高く、ギャンブル依存症を発症しやすいことが明らかになっています。
そこで今回は、ギャンブルにおける男女の選択心理や行動の違いを深掘りしていきます。男性と女性のギャンブル思考にはどのような違いがあるのか、実際の調査データをもとに詳しく見ていきましょう。
ギャンブルにおける男女の違い
ここでは、ギャンブルにおける男女の違いを、以下の2つの観点から見ていきます。
ギャンブルの種類
ギャンブルの金額
ギャンブルの種類
まず、男性と女性がそれぞれ好むギャンブルの種類についてです。
2016年、イギリスで1,000人を対象に行われた調査では、オンラインギャンブルをしている人は、男性と女性でそれぞれ同じくらいの人数であることがわかりました。その一方で、男性と女性では、人気のギャンブルや、定期的にプレイするゲームの種類が異なることも明らかになっています
【男女別|人気のオンラインギャンブルランキング】
# | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1位 | スポーツベッティング(73%) | オンラインビンゴ(60%) |
2位 | オンラインポーカー(29.18%) | スポーツベッティング(40%) |
3位 | オンラインビンゴ(28.65%) | オンラインスロット(34%) |
(参照:7 SURPRISING DIFFERENCES IN GAMBLING HABITS BETWEEN MEN AND WOMEN)
また、オンラインルーレットについても、男性のほうが好む傾向にあります。27%の男性がルーレットをしているのに対し、女性は19%という結果に。ブラックジャックとポーカーも、オンラインルーレットとよく似た男女差がありました。
一方、オンラインスロットは、女性に人気のあるゲームで、定期的にプレイしている女性が34%なのに対し、男性は26.5%です。
このように男性のほうが好むのは、スポーツベッティング、オンラインルーレット、ブラックジャック、オンラインポーカー。女性のほうが好むのは、オンラインビンゴとオンラインスロットという結果になりました。
では、日本国内ではどうでしょうか。
日本でも同様に、男女間ではプレイするギャンブルの種類に差が見られます。以下の表は、過去1年に男女がそれぞれ最も多くお金を使ったギャンブルのランキングを示しています。
【男女別|過去1年に最もお金を使ったギャンブルランキング】
# | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1位 | パチスロ(35.4%) | パチンコ(60%) |
2位 | パチンコ(34.6%) | パチスロ(16%) |
3位 | 競馬(12.3%) | 宝くじ(16%) |
上記2つの調査結果より、男性のほうが戦略や研究、暗記を必要とするゲーム、および還元率が高いゲームを好む傾向が見て取れます。男性は自分のギャンブルのスキルを競い、挑戦的であると考えられます。
一方で女性は、ビンゴやスロットマシン、宝くじなど、運を競うゲームを好むことがわかります。女性は、自分のギャンブルの腕を試すためにプレイしている訳ではないようです。
ギャンブルの金額
上記のインフォグラフィックは、オンラインギャンブルにおける、1年あたりの男女の損失額の差を表しています。男性のほうが、女性よりも1年で19万円ほど多くギャンブルで損をしています。
損失額の差の理由の1つに、男女のリスクとの向き合い方の違いがあると考えられます。
たとえば、2016年、イギリスで1,000人を対象に行われた調査によると、「500ポンドの儲けが出たらどうするか?」という質問に対して、「すぐに現金化する」と回答した女性は72.3%であったのに対して、男性は61%でした。さらに、儲け額を増やすために現金を使うと考える女性はわずか9%だったのに対して、男性は13%でした。
このように、女性は慎重にギャンブルを楽しんでいるのに対して、男性はリスク志向が高い傾向があります。男性は一攫千金を夢見て、再投資に意欲的であることから、結果的に損失額が女性より多いと考えることができます。
日本のギャンブル中毒?依存症の男女差
ギャンブルにおける男女差は、日本でも世界と同様に見られます。下のインフォグラフィックは、男女のギャンブル依存の割合を表しています。
ギャンブル等依存が疑われる者の割合は、男性が3.7%であったのに対して、女性は0.7%でした。男性のほうが女性よりもギャンブルにはまりやすく、依存しやすいことがわかります。
ちなみに、ここでいう「ギャンブル等依存が疑われる者」とは、SOGS(アメリカのサウスオークス財団が開発したギャンブル依存症診断のための質問票)で5点以上をマークした人のことです。
男性がギャンブル依存症になりやすい理由としては、報酬系をつかさどる脳内物質「ドーパミン」が科学的に男性に影響を及ぼしやすいことが挙げられます。
ドーパミンは快楽を覚えたときだけでなく、期待が高まったときにも分泌されます。ギャンブルでは大きな報酬が期待されるため、ドーパミンが増えるのです。
男性はもともと、男らしさに欠かせないホルモン「テストステロン」が活発に働きます。テストステロンの攻撃性は、昔は狩りをしたり家族を危険から守ったりするために必要なもので、それが不要となった今でも「攻撃性」はまだ残ってると言われています。
テストステロンが産出されると、ドーパミンが分泌され始めます。ギャンブル依存症が女性より男性に多いのは、ギャンブルが「攻撃性」を出せる分野であり、ドーパミンが分泌されやすいためです。
ドーパミンの過剰な分泌の結果、快楽への反応が鈍くなり、ダメだと思っていてもギャンブルを辞めることができなくなってしまうのです。
【豆知識】ギャンブルにおける男女心理
続いて、ギャンブルにおける男女心理に関する興味深い知識をいくつかご紹介します。
パチンコ?パチスロのファンの男女比
日本遊技関連事業協会が発表している「パチンコ?パチスロファンアンケート2022」によると、来店したファンの男女比は「男性79.6%:女性20.4%」と、圧倒的に男性が多くなっています
(参照:2022年パチンコ?パチスロファンアンケート調査)
ギャンブル依存症で身を滅ぼすのは「男」
上記でも少し触れましたが、女性よりも男性のほうがギャンブル依存症になりやすいという事実があります(日本国内 男性:3.7%、女性:0.7%)。
1つ目は、男性は「システム化」を得意とする脳をもつことです。女性よりも男性のほうが「ギャンブルをマスターして勝ちたい」「必勝法を勉強して勝ちたい」という思いが強くなりやすいと言われています。
2つ目は、「自分の力を誇示したい」という欲求が女性よりも強いことです。お金があれば自分の強さや男性としての甲斐性を示せるという考えから、手っ取り早い方法としてギャンブルに頼ってしまうのです。
ギャンブルで何度負けたとしても、本能的な「勝ちたい」「快楽を得たい」という気持ちが抑えられず、借金を重ね、身を滅ぼしてしまう……という悪循環を生みます。
まとめ
今回は、男性と女性のギャンブル思考にはどのような違いがあるのか、実際の調査データをもとに詳しく紹介しました。
男女では、ギャンブルの楽しみ方やリスクの捉え方の心理に大きな違いがあります。たとえば、男性はリスク志向が高く、自分のスキルを試すために戦略や研究、暗記を必要とするゲームを好みます。一方、女性は慎重派が多く、運を試すゲームを好む傾向にあります。
このような心理の違いから、男性は女性よりもリスクが増え、大金を消費する可能性が高いことがわかります。結果、男性のほうが女性よりもギャンブル依存症に陥りやすいのです。
ギャンブルにはさまざまな楽しみ方があり、男女で好みのゲームの種類やリスクの捉え方に違いがあるのは興味深いことです。しかし、ギャンブル依存症を発症すると、自己コントロールができなくなり、日常生活に支障をきたすこともあります。事前に予算を決めるなど、責任をしっかりもって安全にギャンブルを楽しみましょう。